「なぁ、なんか欲しいモンってあるか?」
唐突な俺の質問に久保ちゃんは呼んでいた雑誌から視線をあげた。
俺を見て「んー?べつにないよ」と首を傾げるが、くわえ煙草が目にしみるのか、いつものように細目でどこを見ているのか分からない。
今日は外出予定のない俺らは家でまったりと過ごしていた。ソファに座る久保ちゃんとそれを背にしてテレビゲームに向かっていた俺。
しばらく会話のなかった空間での突然の質問は、確かに首を傾げたくなるものかもしれないけど、俺にとっては違った。・・だってゲームしながらもずっと考えていたことだったから。
「じゃあっ、俺になんかして欲しいコトは?」
ゆったりと組まれた足の裾をぎゅっとひっぱって見上げると、久保ちゃんはきょとんとして言った。
「・・?なに、急にどしたの」
「いや、だから〜、久保ちゃんって何も言わねーじゃん。欲しいモンとか、そういう要求っての?」
俺はいつも言うけどさ。アイス食いたいとか、たまには外食したいとかゲーム欲しいとか。
急にそう考え出したのはテレビがきっかけだった。俗に言う恋人同士っつーのは、そういう風に相手にして欲しいコトとか、言わずに分かりあえることが望ましいらしい。そういうのをしてあげたりすることが『愛情表現』っていうんだって。でも要求ばかり相手に押しつけたり、見返りを求める優しさだったり、そういうのは長続きしないんだってさ。
俺の場合はいっつもしてほしいコトばっかで、久保ちゃんはいつも見返りなんか求めずに俺の願いを聞いてくれるから、なんだか無性に不安になったんだ。
俺、久保ちゃんに何もしてあげれてねぇなって。
俺がそう説明すると、久保ちゃんは何を思ったのか、楽しそうにくすりと笑った。
「あれ、気づかなかった?俺はいつも見返りを求めてるけど」
「げ、そうなのか?」
それじゃあダメじゃんって思ってたら、久保ちゃんは煙草をもみ消して後ろから俺の両脇に手を入れると軽々とソファに持ち上げた。
「わっ、何すんだよっ」
すっぽりと背後から抱きしめられて、片手がいやらしくわき腹をはい回り、抗議の声を上げる。
「ちょっ、久保ちゃんっ!」
「だからー、みかえり?」
「は?」
「今日は朝も昼もご飯つくってあげたよね?」
「え、・・あ、ああ」
「晩ご飯もつくってあげるから、―――いいでしょ?」
「って、く、くぼちゃっ、どこ触ってっ・・んっ!」
抗議の言葉は最後まで言えずに久保ちゃんの唇にふさがれる。深く舌を絡めとられながら俺は徐々に力が抜けていた。胸の突起に刺激を与えられ、ジーパンのベルトを外されながら、なるほどこれが久保ちゃんの”みかえり”というやつなのかと考えている俺がいた。いつも俺の世話を焼いてくれながらワガママも笑って許してくれるのは、俺の体が欲しいからなのか・・、って。・・・っていうか、それってどうなんだよ。
そう反論したいと思いながらも、そうしている間にいつの間にか衣類はすべて脱がされ、俺の前を口に含んで絶え間ない快感が与えられる。久保ちゃんの濡れた長い指が1本後ろに入り込んで緩くくすぐる頃には、すでにイキそうになってた。だんだんと熱が高まるにつれ、俺は何も考えられなくなる。前も後ろも気持ちよくてたまんない。
ぬるりと久保ちゃんの熱いモノが入ってくるのを感じて、俺はその刺激だけでたまらずイッた。
「時任っ・・」
熱い久保ちゃんが俺の中を擦り、熱い久保ちゃんの色っぽい声が俺の腰をゾクリとさせる。
「時任・・っ、ね、わかる?」
「ああっ、な、に・・?」
「これがっ・・俺の愛情表現」
「う、あ・・くぼちゃっ・あッ・・」
激しく俺の腰を揺らしながらゆるりと微笑む久保ちゃんが言う。俺はその目を見ながらああ、なるほどと思った。
見返りとかじゃなくて、たぶん久保ちゃんはハナっから、何も望んでいないんだ、と。
そう。たぶん、「俺」以外は―――。