「なぁ、マジで、はめんの、これ・・?」
「指にはめなくてどう使うの」
「そうだけど、は、恥ずかしすぎる・・」
「はいはい、左手かして――」
「いっ今かよ?!」
店内は薄暗くまばらしか客はいないとはいえ、一目を気にして周囲を見回す。
「うん、今。このために今日は予約したんだから。ほら、夜景の見えるレストランって言ったらプロポーズの定番じゃない」
「プロポー・・ず!?
」
「同じようなもんでしょ?“愛の誓い”なんだから」
そんな風に優しく微笑まれては、何も言えない。
おずおずと差し出した左手は、ぐいっと引っ張られて、渋々開いた薬指を久保ちゃんの手が優しく撫でる。
ダメだ。顔が熱くて堪らない。
こんなことならさっさと自分ではめてしまえば良かったと、沸騰寸前の俺とは裏腹に、久保ちゃんの長い指に掛けられたシルバーの指輪は、俺の指に添うようにゆっくりとはめられた。
「うん、サイズぴったり。似合うよ」
「う、うう・・。マジ恥ずい・・。てかなんでサイズ知ってんだよ・・」
「企業秘密です」
楽しそうに笑う久保ちゃんに、俺は湯だった顔をあげられない。
なんだって俺ばっか、こんな恥ずかしい思いを・・・
そのとき、不意に思い浮かんだ。
「なぁ、こういう指輪って片方だけがするもんじゃねぇだろ?久保ちゃんのも買わないと」
「ああ、それなら大丈夫。ちゃんと買ってつけてるから」
「え?」
くぼちゃんはきっちりと閉めていたシャツを2つほど開けて、そこから銀色に光るチェーンを取り出した。
その先についていたものは・・、俺の左手に光るものと、同じもの。
「ね?」
それを見せつけるようにして小首を傾げてみせる。
「・・・・・ね、じゃねぇだろ・・」
目を開いたまま、ヒクリ、顔がひきつる。
「――なんで俺だけ指なんだよ!お前だけ首にかけてずりぃ!俺もそっちがいい!!」
「あら。だってお前、首輪は嫌だって言ったじゃない」
「お前の言う首輪は嫌なだけだ!っつーか久保ちゃんっ、分かってて楽しんでやがったな!」
久保ちゃんは悪びれもせず楽しそうに笑い、俺の方へ手の甲をかざしてみせた。
「だって見たかったんだもん。時任のそれ。ほら、こうやって芸能人の記者会見みたいに手を見せてみて。時任の指はきれいだから似合うよ」
「だぁれがするか―――――っっ!!」