愛のカタチ【6】〜 エピローグ 〜



―――時任side




「なぁ、マジで、はめんの、これ・・?」

「指にはめなくてどう使うの」

「そうだけど、は、恥ずかしすぎる・・」

「はいはい、左手かして――」

「いっ今かよ?!」


店内は薄暗くまばらしか客はいないとはいえ、一目を気にして周囲を見回す。


「うん、今。このために今日は予約したんだから。ほら、夜景の見えるレストランって言ったらプロポーズの定番じゃない」

「プロポー・・ず!?

「同じようなもんでしょ?“愛の誓い”なんだから」


そんな風に優しく微笑まれては、何も言えない。

おずおずと差し出した左手は、ぐいっと引っ張られて、渋々開いた薬指を久保ちゃんの手が優しく撫でる。

ダメだ。顔が熱くて堪らない。

こんなことならさっさと自分ではめてしまえば良かったと、沸騰寸前の俺とは裏腹に、久保ちゃんの長い指に掛けられたシルバーの指輪は、俺の指に添うようにゆっくりとはめられた。


「うん、サイズぴったり。似合うよ」

「う、うう・・。マジ恥ずい・・。てかなんでサイズ知ってんだよ・・」

「企業秘密です」


楽しそうに笑う久保ちゃんに、俺は湯だった顔をあげられない。

なんだって俺ばっか、こんな恥ずかしい思いを・・・

そのとき、不意に思い浮かんだ。


「なぁ、こういう指輪って片方だけがするもんじゃねぇだろ?久保ちゃんのも買わないと」

「ああ、それなら大丈夫。ちゃんと買ってつけてるから」

「え?」


くぼちゃんはきっちりと閉めていたシャツを2つほど開けて、そこから銀色に光るチェーンを取り出した。

その先についていたものは・・、俺の左手に光るものと、同じもの。


「ね?」


それを見せつけるようにして小首を傾げてみせる。


「・・・・・ね、じゃねぇだろ・・」


目を開いたまま、ヒクリ、顔がひきつる。


「――なんで俺だけ指なんだよ!お前だけ首にかけてずりぃ!俺もそっちがいい!!」

「あら。だってお前、首輪は嫌だって言ったじゃない」

「お前の言う首輪は嫌なだけだ!っつーか久保ちゃんっ、分かってて楽しんでやがったな!」


久保ちゃんは悪びれもせず楽しそうに笑い、俺の方へ手の甲をかざしてみせた。


「だって見たかったんだもん。時任のそれ。ほら、こうやって芸能人の記者会見みたいに手を見せてみて。時任の指はきれいだから似合うよ」

「だぁれがするか―――――っっ!!」



結局久保ちゃんは俺の分のチェーンも用意しているらしい。家に買ってあるからと、機嫌を取る久保ちゃんに諦めの溜息を一つついて。

それじゃあサッサと帰るぞと店を出る。


「そんなに恥ずかしい?嬉しくないんだ?」

「うっ、・・・嬉しくない、わけじゃ・・・」

「ないんだ?」

「うるせっ!いいから帰るぞっ!」

「はいはい」


二人で肩を並べて、足早に家路へ向かう。
熱く火照った頬はきっと赤くなっていることだろう。

それを隠すことはできないけれど。

慣れない指輪を隠すため、左手を久保ちゃんのポケットの中へと忍ばせて。

すぐに重なった大きな掌を、ぎゅっと握りしめた。

 


 




☆ひまわり様☆
このたびはリクをありがとうございました!!
改めてブログにてお礼を書かせていただきたいと思いますm(_ _)m


 

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