「寒い!冷てぇ!久保ちゃんっ、寒い!」
寝室のエアコンが壊れたのは数日前のこと。
はじめはリモコンの電池が切れたんだろうと交換してみたが直らず、どうやら本体が壊れているらしく修理を依頼したが、電気屋さんが来てくれるのは1週間後とのことで。
それまでは仕方なくリビングの暖房をつけて、扉を全開にして寝室に暖かい空気を送っているんだけど、やはり寒がりな猫には不満なようで、ここ数日ずっと寝る前には時任のこんな悲鳴が聞こえてくる。
「フトン冷てぇ!早く、久保ちゃん、早くっ!」
「はいはい・・」
先にベッドにもぐりこんだ時任は不機嫌に俺を呼ぶ。
うちに一つしかない狭いシングルベッド。夏はベッドとソファを交替で使っているが、冬はそうもいかず一緒に寝るコトも多い。それも、暖房なしでの寝室は確かにかなり寒かった。
そして毎晩、時任は寝る時間になると、こうやって俺を呼ぶ。自分の方が体温高いくせして、俺を湯たんぽのように扱っているのだ。
・・まぁ、それはいいとして。
「早く来いよ、久保ちゃん!」
そう言って布団を少しめくり上げて手招きする時任の姿にクラリとした。
ちょっと、こっちの気も考えて欲しいなぁ・・。
そんな誘われかたしたら、変なこと考えちゃうんだけど。
俺にとっての問題はそこだった。それもここ数日、時任は必要以上に俺にくっついて寝ている。
温もりを求めて無意識なのか、抱き合うようにぴったりと体を寄せて眠る時任に、内心俺はしんどい思いをしていた。
ただでさえ、いつも一緒に寝るときはお前に触れないように我慢してるのに、正直これはかなりの拷問だ。
お前に邪な想いで触れてしまえば最後、多分元には戻れないと思うから。
なのにそんな俺の気も知らず、時任は今日もウトウトしながら俺に抱きついてきた。胸に顔を埋めて、自分の足を俺の足に割り込ませる。
あらら・・。今日も大胆ね。
するとすぐに、スーっと寝息が聞こえ始めた。
ちらり見やると、無防備に眠る横顔とシャツからのぞく鎖骨。
すぐ近くにある細い首筋から、ふわりと時任の香りがして、・・めまいがした。
その姿に、香りに、俺は酔ったように思わずシャツの裾に手を伸ばしていて・・。
「ん・・くぼ、ちゃ・・」
ドキリとした。
むにゃむにゃと何かを口走りながら幸せそうに笑う時任に、俺はのばした手を触れることなく引っ込める。
そしてその笑顔に苦笑しながら、もう一度、そっと手を伸ばし、背に腕を回して抱きしめた。
そんな顔されちゃあ、なんもできないじゃない、と苦いため息を吐きながら。
「しょうがないなぁ・・」
俺はもう一度苦笑して、幸せそうに眠るその頬に、そっとキスをする。
こっそりと落とすだけの、いつものキスを。
まだ当分、これで我慢しなきゃだねぇ。