ノストラダムスの大予言
「明日世界が滅亡するとしたらどうする?」
199X年に世界が滅びるって、なんとかっていう予言者が言ってたらし
い。
来年はそのエックス年てことでクラスではその話題で持ちきりだった。
「おい久保ちゃん聞いてんのかよ?」
「ん〜?聞いてるよ?」
放課後の執行部室。
久保ちゃんはのほほんと返事をしながら近麻を読んでいる。まだ他の奴らは
来てなくて、俺はヒマをもてあましてた。
俺は久保ちゃんなら何をするんだろって聞いてみたかったから、思い出した
ように例の質問をしたんだ。
「ん〜どうするって、今日のうちに何するってコト?」
「そーだよっ。人生最後に何するかってこと!」
「そぉねぇ。・・・ときとーは?」
なんて聞き返してきやがった。久保ちゃんの答えが聞きたいってのに・・・
しょーがねぇなぁ。
「俺様は!有り金ハタイてウマイもの食いまくる!!そうだな、買い置きの
スニッカーズも全部食ってやる!」
「うんうん、それから?」
「やり残したゲームもオールクリアして、んで新しく出たスト2やりこむ!
それからっ・」
そんな感じで俺のしたいことを思いつくだけ言いまくっていった。
久保ちゃんは開いてるか開いてないかわかんねぇような、いつもの目でテキ
トーに相槌をうって聞いていた。
とりあえず今ハマってる食い物は必須だし、あ、あのマンガの続きは見てお
きたいな。
「それから〜っ、えーっと、、」
いざやりたいことって言うとなかなかないもんだな。考えているとほとんど
が日常のたわいもないことで。
「久保ちゃんとファミレスにパフェ食いに行ったり、最後だからな、久保ち
ゃんの作り置きカレー食ってもいいぞ、、」
「うん」
「そんで、久保ちゃんとコンビニ行って・・・」
「うん」
そこまで言って、俺は気づいた。生きてるうちにしたいことって一生懸命考
えてたら、口から出たのは、久保ちゃんとしたいことばかりだったんだ。
食いたいものも、やりたいゲームも欲しいものも、過ごしたい時も場所
も・・
久保ちゃんがいるからこそ、のことだった。
なんかそんなこと真剣に考えてたら、久保ちゃんと過ごす最後って気がし
て、すげー悲しくなってきて、思いつかなくなった。
「・・・」
「・・時任?」
つい黙り込んだ俺を不思議に思ったのか久保ちゃんが顔を覗き込む。俺はあ
わてて、へらって笑ってごまかした。
「やっぱいきなりだと思いつかねぇやっ」
そしたら久保ちゃんは、すげぇ優しい顔で俺に微笑んだ。
なんだか恥ずかしくて、ドキドキして、、それも知られたくなくて、ちょっ
と睨んで聞き返してやった。
「ってゆーか、久保ちゃんはどうなんだよっ?」
「そぉねぇ、俺は・・」
俺が真剣に答えを待っていると、久保ちゃんは少し笑って
「時任といつもどおり一緒に過ごしたい・・かな?」 と言った。
!!
・・くそーっ、鏡見なくてもわかるくらい顔が熱くなった。・・そんな赤い
カオ、久保ちゃんに見られたくなくて、けど嬉しくて、
さっきまでの暗い気持ちなんてすぐに忘れちまった。
俺は俯いたまま久保ちゃんの胸に軽く頭突きする。
「それじゃぁ、、俺と一緒じゃん・・」
そう言うと、頭の上でフッと久保ちゃんが微笑んだのが分かった。
サラサラと俺の髪をなでる手が優しくて、きっとあの優しい瞳で俺を見てく
れているんだろうと思うと
嬉しくてなんだか幸せな気持ちでいっぱいになった。
・・明日世界が滅亡するとしたら・・・
それでも俺たちはきっと変わらない。
いつものように一緒にいる時間を大切に過ごすだけなんだ。
俺たちにとって二人でいることが一番自然で、一番大切な瞬間だから。
「・・時任」
顔を上げると、やっぱりそこには穏やかに微笑む久保ちゃんがいた。
「久保ちゃん・・」
「・・ちょっとっあんたたち!」
「「ん?」」
「あたしらがいること分かってんの!?」
「かっ桂木!いつ来たんだよっ!?」
いつのまにか執行部室には、顔をしかめた桂木と、あきれ顔の室田・松原・
相浦が定位置に座ってた。
「ったく!どんだけ二人の世界に入っちゃってるのよ!」
「あらら」
「おっお前らっ!いるならいるって言えー!!」
たとえ明日世界が滅亡するとしても、きっと俺らは変わらない。
いつものように学校に来て、みんなと過ごして
俺の隣には久保ちゃんがいて・・
いつものように、いつもの仲間と公務を執行する。
自信もっていえるあたり、俺って幸せもんじゃん?
俺様にそう言ってもらえるお前らってかなり幸せもんだぜ、って言ったら
桂木達はため息ついてたけど、久保ちゃんは優しく微笑んでくれた。
その笑顔は俺だけのものだから、、
やっぱ俺が世界一の幸せもんだなって思った。
いつもの日常こそが、一番の望みであり、一番の幸せだったり・・しませんか。
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