5.これからもずっと

 


 

「「あ」」

 

真っ白な世界で捜し求めていた相手は、突然現れた。

お互いに見つめ合って、笑った。

 

「久保ちゃん、なんだよ、こんなとこにいたのか」

「時任こそ、探したよ」

「すんげぇ歩いたんだけどよ、どこまで行っても真っ白なんだぜ」

「そうね、俺もだいぶ歩いたかな」

 

そう言いながら近づく二人の間に、微妙な視界の歪みがあることに気づいた。

 

「・・なんだこれ?」

 

時任が眉を寄せれば、久保田も困ったようにその目の前の障害物を眺めた。

 

「・・ガラス?」

 

コンコンと叩いてみると、それは固い硝子のようだった。

近づくまでは気づかなかったが、二人の間を透明な硝子が隔てている。

真っ白な空間に二人を遮るようにどこまでも続く硝子。

その硝子は見上げても左右を見てもおそらく切り目のない、恐ろしく巨大な壁に見えた。

 

「・・さて、どうしようか?」

 

久保田は少しも慌てた様子もなく、懐から煙草を取り出す。

 

「そりゃ、ぶっ壊すに限るだろ。俺はまだお前に言いたいことがあんだ」

「なんだろうね?楽しみね」

「ああ、じゃないと死んでも死にきれねぇからな」

「うーん、煙草は持ってても、銃は持ってないなぁ」

「俺なんか、なんも持ってねぇっつーの」

「それじゃ、これしかないね?」

 

久保田は両手をポケットに突っ込んだまま、右膝を軽くあげてみせると、時任がにやりと笑った。

 

「ああ、実力行使だ、いくぞっ久保ちゃん!」

「いつでも」

 

時任が右の拳を降りあげた瞬間、久保田も右脚を振り上げた。

二人が同時に攻撃した硝子は、一瞬の静けさのあと、ピシピシと脈のようにヒビが入り、やがて派手な音を立てて砕け散った。

 

「聞いた?3病棟の二人、今朝方、行方不明になったらしいわよ」

「ええ、先週重傷で運ばれてきた二人でしょう?全身に銃創があったぐらいだもの、ワケありなのよ。目が覚めてすぐに逃げたんじゃないかって話よ」

「あら、でも警察がきてたらしいからすぐに捕まるんじゃない?」

 

ナース達の噂話を聞きながら、男はだらしなく伸びた髭をさすりながら笑みを浮かべた。

 

「捕まりゃしねーよ・・あいつらは」

 

男の数日前までの絶望的な表情も、今日は晴れ晴れとしていた。

またひょっこり顔出すだろう、と刑事の勘というより、叔父として、見守り続けた者としての

勘なのだろうか、寄り添う二人の姿を思い浮かべて、目を細めた。

男には使命があるという。

肩を寄せて歩いていく二人を見守るという使命。

あの二人は、これからもずっと共に生きていくだろう。

 

「俺もまだまだ逝けねぇな」

 

白くなった頭を掻きながら、男は楽しそうに笑った。

 

(完)


最後は客観的な目線でしめてみました。荒磯要素がありながらも、WAでの二人でした。

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