キミは空色、本日快晴。
昼下がりの暖かな日差しが、目を閉じていても眩しいほど降り注ぐ。
長袖を着ていても日陰では肌寒い季節であるから余計に、太陽の恵みがポカポカと心地よい眠りを誘う。
本日快晴。
どこまでも高く広がる青空に、薄い筋雲が無造作に伸びている。
目をあけて飛び込んできたのはそんな空と、黒い影。
「なにやってんだよ、ンなとこで」
仰向けに寝っころがっていた俺の上から、のぞき込んでいる影は不機嫌に口をとがらせた。
「んー、お昼寝?」
「見りゃ分かる。なんで一人でフケてんだっての。4限目始まっていきなりいなくなるから探したじゃねーか」
「・・・ごめんね?天気よかったから」
「だったらヒトコト言っていけ。ついでに俺も誘え」
どうやら一人で授業をフケたことを怒っているらしい。ぶつぶつと文句を言いながら隣に座り込む時任に、もう一度ごめんねと謝る。
時々ではあるけど、たまにこうやってフラリと一人になりたくなったりする。
誰にも言わず、気づかれず、いなくなりたくなる。
なんでなのかは分からない。
それは夕べバイトが遅かったせいで、睡眠不足だから昼寝をしたかったとか、そんなときに限って、時任が他のクラスメイトと仲良く話している姿を見て邪魔しちゃ悪いかなと思ったからとか。いろいろ理由は思いついたけど、どれもしっくりこなかった。
「・・なんだよ。久保ちゃん、俺来ない方がよかったか?」
黙って考え込んでいたら、それをどうとったのか時任が急にしゅんと悲しげな顔をした。
いつも俺様のくせに、こういう風に自信なさげな顔したり、俺の顔色敏感に窺ってるとことか、ギャップに驚かされるだよねぇ。
「いんや、そんなことないよ」
本当にそういうわけじゃないから、安心させるように言うと今度はニッ笑って
「あったりめーだろ!変な心配かけやがって、辛気くせーカオしてんなよ」
と強気な笑顔を見せる。
うーん、相変わらずクルクル表情変わるなぁ。思わず感心してしまう。
コロコロクルクル動く表情を見ていると、つい目を奪われて、もっと見たいと凝視してしまう。ほんと、いつ見ても飽きないんだよねぇ・・・。
「気をつけマース」
「おう」
二人でそんな他愛のないハナシをしていると、さっきまでのポカポカ陽気はいつの間にか消えていて、雲が増えて太陽を覆っていた。薄い雲に隠されているだけで、気温もぐっと下がったように感じる。
どうやら時任のように、天気もころっと変わったらしい。いや違うか、時任が天気みたいに変わるのか。そう思ってふっと笑みがこぼれた。
今にも降り出しそうな雨のようにしゅんと落ち込んでいるかと思えば、とたんに雲一つない快晴のような晴れ晴れとした笑顔を見せる。
それは本当に変わりやすい天気のようで、鮮やかで目を惹かれるのだ。
「俺がいつでも一緒についていってやるから、次はちゃんと言えよ」
少し照れたように頬を染めて、ぶっきらぼうに言う姿はあまりにも可愛らしい。もっと見たくて、もっと赤く染めてやりたくなった。
いつか見たキレイな夕日のように。
「・・・じゃあ、ずっと一緒にいてくれる?一生、俺の傍でさ」
「・・・へ?」
思いつきではあったけれど、言葉は本心だった。
時任は驚いたようにしばらく唖然としていたけれど、ふと我に返って、一気にカオを赤らめた。
そして一言
「っったく、仕方ねぇなぁ!どうしてもってゆーなら、いてやるよ」
「・・・」
そんな反応に、逆に驚かされたり。
知らないよ、時任君。
そんなに安請け合いしても、後で後悔しても今の言葉は忘れてあげないよ?
キミは空色。移りげで、脆く。そしてとても逞しい。