優しいkiss(後編)

 



「時任、平気?」

額にひんやりと気持ちよい感触がして、俺は目を開けた。

頭も体も熱くて、ぼーっとしてる。俺をのぞき込むように久保ちゃんが心配そうな目で見つめていた。

そっか、モグリんとこ行ったのは昨日で、今日は俺、風邪引いて寝込んでんだっけ?

だいぶ寝てたんだな。久保ちゃんが作ってくれたお粥食べて、薬飲んで寝たらさっきよりは楽になってた。

「・・久保ちゃんって、母猫みたいなんだって」

突然そう言ったのは昨日の話をさっき夢でも見たからかもしれない。

久保ちゃんは病人の傍にいるせいか珍しく煙草も持たず、俺の言葉に目を丸くしていた。

「・・鵠さんがそう言ったの?」

「ん」

「そうかな?俺も母親ってのは無縁だったから、よくわかんないけど・・、ちょっと違うかも・・」

「・・・違うだろ。そんな図体のでかい女・・いない」

「でかいのも、可愛いくない?」

ちょっと首を傾げて笑ってみせるが、お世辞にも可愛いとは言えなかった。

つられて笑いながら、のどが渇いてたのか、咳がでる。

「ゲホゲホ・・、久保ちゃん、うつるぞ・・」

「うつらないよ。お水、のむ?」

自信満々にうつらないと言う久保ちゃんに、俺は眉をしかめて、水をもらおうと手を伸ばす。だけど久保ちゃんはコップに入った水を渡そうとはしなかった。

「・・?」

そしてその水を久保ちゃんが飲んだかと思うと、ゆっくりと俺の上に覆い被さってきた。決して俺に重みを分けることなく、ゆっくりと顔を近づけて、その触れたことのない唇が降りてきたんだ。

2人の唇がしっかりと重なり、久保ちゃんの唇の隙間から、冷たい水が流れ込んできた。

ああ、久保ちゃんは飲んだんじゃなくて、口に含んでいたんだと、ぼんやり思う。

俺がムセないようにゆっくりと流し込んで、コクコクと飲み込むとようやく唇を放す。

「・・・久保ちゃん・・」

「・・うん?」

「・・ほんとにうつるぞ」

いつもと変わらない表情で微笑む久保ちゃんに、憎まれ口のようにでてきたのはそんな言葉で・・。

俺の体は熱のせいか火照っていて、喉はまだ、乾いたままだった。

「・・飲む?」

そんな俺に気づいたのか、半分ほど水の残ったコップを掲げて笑う久保ちゃんに、俺はなんでか、頷いていた。

久保ちゃんはほんの一瞬、俺を見つめたけど、すぐにさっきと同じように水を口に含むと、また俺の顔に近づいてくる。

自分で頷いといて、今更ながら暑いほどの恥ずかしさがこみあげたけど、それも冷たい唇から与えられる水に、少しずつ、少しずつ、心地よさに変わっていった。

そして与えられた水をすべて飲みきっても、水の代わりに、久保ちゃんの冷たい舌が優しく絡んできても・・、唇は放れなかった。

優しく、優しく、俺が苦しくないように、病人を癒すようなキスが、心地よくて・・、気づけば夢中で口付けていた。

――そっか、これはもう母性なんてものじゃねぇな。

「母親とはちょっと違う」と言って笑った久保ちゃんの気持ちが、少しだけ分かった気がした。

ようやくそう考えた思考も、残った熱と与えられた優しすぎる快感に、なんだかどうでもよくなってきて・・。

俺はその日、何度も何度も、水を求めるかのように久保ちゃんのキスを求めた。

やがて心地よさにまどろみながら、こういう愛情表現なら、いいなぁと思った。

母性なんて分かんねぇけど、こういう愛情なら、俺も久保ちゃんに返してあげれる。

ふわふわと心地よい感触を味わいながら、俺たちは抱き合って眠った。

そしてその日から、久保ちゃんのおやすみのキスは、頬から唇に変わった。

(完)


愁眉様!!

WAにてこんな感じで大丈夫だったでしょうか!!?

WAは荒磯ほど時任も子供じゃないイメージだったのですが、純粋なところは変わらず、久保ちゃんの思惑に少し戸惑いながらも、乗せられていく感じです;^^

二人の関係も一歩前進であります☆

なんだか続きがありそうな感じで終わっちゃいましたが、これ以上続けると裏になりそうだったので(笑)

 ご感想・苦情などありましたらぜひぜひお願いします!!

 

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