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愛のカタチ【4】
―――久保田side
店に着くと時任はすでに待ってくれていた。
「おっせーよ、久保ちゃん」
少し口を尖らせる様は、いつ見ても幼い。
可愛いなぁ。
遅いっていったって、ほんの数分の遅刻。
この分じゃきっと時間より前に着いていたんだろう。
「ごめんごめん」
席に着いて早速ビールと料理を頼むと、不機嫌だった時任も徐々に笑顔になってくる。
「お前よくこんな店知ってたな」
「うん、こないだ桂木ちゃんに教えてもらったの」
「へぇなるほどなー。いい店だけど、もうちょいラフでもいいな」
「まぁたまには、ね?」
こうやってかしこまって、二人きりで外食するのは久しぶりのこと。二十代のころは時任がカレーばっかで嫌だって、よく外食してたっけ。
「そういえば、最近は何作っても文句言わないね?」
「そりゃー慣れだろ。カレーもさんざん食って、主食みてーなもんになってるし」
「カレー自体が白米みたいな?」
「そういうこった。慣れりゃなんでも旨い。まぁ実際久保ちゃんの料理の腕はかなりあがっただろ」
「まぁね。愛しの時任に食べさせるためだからね」
ウインクを飛ばして見せると、時任は呆れたようにしながらも、ほんわりと頬を染める。
そういうところは昔から変わらない。
いつまでもウブでいいな。
いつまでも変わらないことなんて、ないと思っていた。
時任と会うまでは。
いずれ変わるだろうというほどの思いしか知らなかったし、時が経つにつれ記憶がすり減るように、何もかもそのままではいられないと思っていたから。
だけど、17年前のあのとき。
離れなくちゃいけない恐怖が襲ったとき、俺は確信した。
変わらないものが、あるのだということを。
だからこそ。
『ずっと傍にいてよ』
あの一言に、すべての重みをかけて託した。
今日はいい区切り。
先日の同窓会のこともあって、時任にも何かしら感じるところがあったようだし、ちょうどいい機会だと思った。
食事後のコーヒーすするころ、そのタイミングはやってきた。
「今日はデザート食わねぇの?」
「うん、今日はいいかな。それよりさ、時任、これ」
「――?なんだそれ」
時任の視線はテーブルの真ん中。
俺が差し出した、赤いリボンに包まれた白い小さな箱。
それは誰が見ても分かる、プレゼント。
何だと思うかな。
時任は首を傾げて物珍しそうに、しげしげとそれを見つめている。プレゼントだとは思うけれど、俺が時任にあげるものだとはイマイチ認識していないようだ。
そのスレていないところも、やっぱり可愛い。
中身を見て、時任はどんな反応をするだろう。
柄じゃないって恥ずかしそうに怒るかな?
それとも嬉しいって笑ってくれる?
どちらにしても、喜んでくれるといいな。
俺にとっても、初めての贈り物だから。