核心の想い(前編)

 


放課後のいつもの生徒会部室−
「んだぁーっ!!くそっ!!ぜってー負けねぇっ!」
持ち込んだプレステで相浦と対戦中
「うっあーっ!!」
「やった!俺の2連勝!」
「くっそー!相浦っ!今のハメだろ!?ずりーぞっ!!」
「なに言ってんだよ〜時任今のは俺のテクだろっ」
俺はすっげぇイライラしててゲームにも熱中できずにいた
その理由は、、ほかでもない、久保ちゃんだ
一週間前、久保ちゃんが生徒会本部に呼び出しを受けた
いつもなら俺も一緒に呼ばれるのに、今回はなぜか久保ちゃんだけだ
俺も行くって言ったら久保ちゃんが
『ごめんね、今回は一人で行ってくるから、待っててくれる?』
って言うもんだから言うとおりにした。
俺は結局何も聞かされず、ここ一週間、久保ちゃんは毎日生徒会室へと向かっている
なんか・・それって一体なんだってんだよ?
いつも一緒だって・・相棒だから、、そう思ってたから余計に、久保ちゃんに突き放された気がしてなんかすげぇショックだった
「ちょっと時任、あんた何イライラしてんのよ?」
桂木がすぐに気づいて眉をしかめる
「っべっつにイライラしてねぇよ!」
「どーせ久保田くんが本部に借り出されてるもんだからイラついてるんでしょ?」
「あ!?なんで俺様がンなことでイラつかなきゃなんねーんだよっ!?」
「どうでもいいけどゲームばっかしてないで業務こなしてよねっ、相浦も!」
お怒りモードの女王に誰も勝てるはずもなく、相浦は身をすくめると、「はいはーい」と返事をしてゲームの電源を切る。俺もしぶしぶ仕事に向かうことにした
「分かったよっ俺は巡回行って来るっ」
「じゃあ室田君と一緒に行って・・」
「俺様一人でだいじょーぶだよっ!」
「あっちょっと時任っ・・」バタン
と桂木の話も聞かず勢いよく部室のドアを閉めて行った
「あーぁ、もう妬いてんの分かりやすすぎよねぇ・・」
「うむ、仕方あるまい、久保田が毎日のように本部へ足を運ぶなんて珍しいからな」
扉の向こうから室田たちのそんな声が聞こえてきたけど、俺はとにかくイライラしてて、こんな時は大塚たちをぶっ飛ばしてスッキリしたかった

 


一週間前の生徒会室―

「わざわざすまないな、誠人」
「いえいえ、松本会長の呼び出しとあらばねぇ」
「ふっ、相変わらず心にもない言い方だな」
「そんなことないですよ、俺一人呼んだってコトはまた何か機密ごとでもあるのかな〜ってね」
時任が不機嫌そうにしてたからなぁ、早く戻ってやらないと・・
「すみませんね久保田君、貴方お一人をお呼びしたのは私の提案なんですよ、私からご説明致します」
そう言ったのは松本の隣から一歩下がったところにいた橘だった
「まぁそういうことだから聞いてやってくれ」
「へぇ、そりゃどういう用件でしょーかねぇ」
「実は我が校の生徒の隠し撮りがネットに流出しているという情報があるのです」
「・・へぇ、それはそれは」
「更衣室での着替えの画像や隠し撮りの写真など、それも男子生徒ばかりの」
「ふーん、もの好きもいるもんだぁね」
「ええ、しかも画像を見る限りでは内部の者が撮っているとしか思えないものばかりで・・、怪しまれずにカメラを置けるのも限られますから・・」
「で?そのホシを俺にあげろと?」
てっとり早く要点を突くと、橘が穏やかな笑みを浮かべる。
「既にいくらか犯人に目星はつけています。出ている画像や写真を解析し可能である者を調べ、ピックアップしたものです。しかし決定的な証拠がない以上、現行犯でないと捕まえることは難しいかと思います」
と疑わしい人物のリストとやらを俺に差し出した
「なるほどね、ある程度は調べたワケだ」
「あぁ、誠人すまんがよろしく頼むぞ」
「・・・一つ聞いていいかなぁ、橘副会長」
「ええどうぞ」
「ここまで犯人に目星をつけといて、なんで俺一人に?」
「・・すみません、久保田君、貴方にも全く関係ないわけではなかったものですから」
「はぁ、というのは・・どーゆーいみ?」
「・・あまり楽しいお話ではないので、内密にお願いしたいのですが・・・・」

橘の話を聞いた久保田は、小さくため息をつくと仕事を引き受けることを了承したのだった

 

「みっつけだぜっ大塚!てめぇらこんなとこで何やってんだぁ!!」
西棟奥の男子更衣室で、例のやつらを見つけて俺は勢いよく叫んだ
「なっなんだよっ時任!タバコふかしてただけじゃねぇか!」
「うるせぇ!」バキッドコッ
「うぎゃーっ!!」
「なんだよっ覚えてろよーっ!!」
「あ!?ちょっとまてよっっ!!」

タムロしてたやつらにケリを2、3発入れると、お決まりの”負け犬の捨て台詞”を吐いて逃げていった
「ちっ、なんだぁ、すぐ逃げやがって、、全然スッキリしねぇじゃねぇか!」
くそーっだいたいなんで俺がこんなにイラつかなきゃなんねんだぁ?!
・・久保ちゃんのせいだ・・
いつも一緒にいるのに、たまにこんな風に俺を突き放して・・
久保ちゃんのパートナーは俺しかいないって分かってるのに、久保ちゃんが何考えてるか時々わかんなくて、、すっげぇなんか不安になることがある
はぁ、、ってため息ついて部室に戻ろうとしたとき、、誰もいないはずの体育準備室から物音がした
体育準備室は体育館から直結していて近いとはいえ人気の少ない場所だった
しかも放課後のこの時間は部活の奴らもとっくに帰ってる。いつもなら誰もいないはず・・
「まだ誰か残ってたのか?」
ガラガラ
体育準備室の戸を開けて、とりあえず呼びかけてみる
「誰かいるのか?」
・・いねーな、気のせいか
真っ暗な部屋はあまり使わない工具類や球具類などが散らばっており、やはり人気はなかった。俺はそのまま部屋を出ようと背を向ける
その時-
「ん゛っっ!!??」
突然後ろから口を布のようなもので塞がれ・・ツンと鼻をつく匂いがして・・
そのまま意識が遠くなっていくのを感じた
「んぐっ、・・」
くぼちゃ・・ん・・・

 


「さぁて、今日も動きはナシ・・かな?」
久保田はのほほんとタバコをフカシながら部室に戻るとめずらしく居残っていた桂木が出迎える
「あぁ、久保田君か。おかえりなさい。今日も本部?何やってるかしらないけど、仕事、終わりそうなの?」
「ん〜、まだ、だぁね。も少しかな。それより、桂木ちゃんこんな時間までいるなんて、どしたの?」
「それが・・時任がまだ巡回から戻らないのよ」
と少し心配したように言った
その言葉に久保田は、部室に室田と松原がいることに気づく
「・・桂木ちゃん、もしかして時任一人で?」
「あぁ、そうそう一人で巡回に行っちゃったのよ!久保田君に頼まれたとおり室田君と組ませようと思ってたんだけど、一人でいいって言うこと聞かなくて。
だいたい久保田君のせいよ!時任ったら最近機嫌悪いのなんのって・・ってあれ?久保田君?」
「久保田なら今ものすごい勢いで走っていったよ?」
相浦がそう答えると、桂木は深いため息をついた
「あの久保田君が走るなんて、やっぱ時任絡みだけ・・ね」

 


「う・・・ん、頭・・くらくらする・・」
目を開けるとしばらく意識がはっきりしなくて、頭が重かった
そこは真っ暗で、横たわってのは冷たい床だった
自由の利かない体・・俺はなんでここにいるのか考えて、やっと思い出した
「!俺っ、さっき変な臭いかがされて・・・」
意識がはっきりすると自分の置かれてる状況がようやく分かった
冷たい床の上に横たえられ、腕はうしろで組んだまま何かできつく縛られていた
そして・・なぜか上半身だけ服を剥ぎ取られている
「なっ!なんだよこれっ!?」
その時-
カシャッ とシャッターを切る音とまばゆいフラッシュが時任を襲った
「!!まぶしっ!」
「おはよう、時任君、ずいぶん早く目覚めてしまったようだね?」
あまりの眩しさに眉をしかめながら、そばに人がいたことに驚いて身を構える
「だっ誰だお前!!?」
部屋は暗い上フラッシュをきられ、時任の目はその男のシルエットすら捕らえられずにいた
くそっなんも見えねぇ!!
すると突然男の腕が足を掴み、引っ張られる
「わっ!何しやがる!!」
驚き足をもがくが腕の自由が利かないせいか、簡単に押さえつけられてしまった
「いや、何、君の裸がとりたくてね、ビデオもね・・カメラをセッティングしてたら君が目覚めてしまったんだよ、寝てるうちに済ませようと思ってたんだけどね」
と男は耳障りな笑い声で話した
なっなんだこいつ、気色わりぃっ!!
「そっそんなの撮ってどうすんだよっ?!」
「ふふ・・君の写真をね、一度ネットに載せたところ、評判が良くてねぇ、、もっとすごい動画でも撮ってそいつらに高く売ろうと思ってるんだ」
「なっ!」
こいつ・・なんて商売してやがんだ?くそっ・・腕、ほどけねぇ
ここはどこなんだ?学校か?しかし、こいつの声、どっかで聞いたような・・・?
・・他に人の気配は無いみてぇだし、こいつ一人か?
ようやく回りだした頭でどう逃げようか考えていたところ、男は笑いながら気色悪い言葉を吐く
「・・そうそう、そうやって大人してしてくれよ?とりあえず・・濡れ場、撮っておきたいしね・・」
ようやく男の影を目で捕らえられたものの、男は足をとらえたまま時任の体を組み敷く
そしてガチャガチャとズボンのベルトをはずしにかかった
「なっ何しやがる!!」
「ふふ・・大丈夫だよ、うまくやるからね。カメラも赤外線仕様で君の体をキレイに映してくれてるさ」
男は慣れた手つきで時任のベルトを外し、ズボンを脱がそうとしていた
「やっやめろっっ!気色ワリィ!!!」
時任は動けないなりに懇親の力をこめて抵抗した
じょっ冗談じゃねぇっなんで俺が変態に犯されてビデオに撮られなきゃなんねんだっ!!
縛られた腕が紐にすれて痛んだが、構わずにジタバタと抵抗し続けた
「放せーーっ!!」
男はさすがに手こずったのか、「ちっ」と舌打ちし、時任の腹を一撃殴った
「ぐっ!!」
鳩尾に入り一瞬息が止まる
「まったく、手荒なマネはしたくないのに、、大人しくしてれば、気持ちよくしてあげるから・・」
そう言うと男は動けずにいる時任にのしかかると、裸になっている上半身に唇を落とし始める
首筋、鎖骨、胸、下へと強く吸い付きながら痕を残していく
「っつ・・やっ・・やめっ!」
さっきの一撃で時任はまともに息をつけずにいた
「・・あぁ、やはり素敵な体だね、、声を出してもいいんだよ?ここには誰も来ないからね」
「うっ・・やめろっっ!!」
気色悪い!息苦しい上にその行為に吐き気さえ覚えた
・・くぼちゃんっくぼちゃんっ!
これから自分の身に起こることを考えると頭が真っ白になった
くぼちゃん!!・・気がつくと時任は久保田の名を呼んでいた
ついに下半身の服を下着ごと下ろそうと服に手をかけられた・・その時
「!!」
バンッ!!
突然、大きな音をたて部屋の扉が男の頭上を吹っ飛んできた
「なにっ!?」男が慌ててドアのほうを振り向く
暗闇だった部屋は、破られたドアからの明かりに照らされ、ドアを蹴破った本人がそこに立っていた
「っくぼちゃん!!」
「くっ久保田!!」
時任と男が同時に呼んだ名は、久保田だった
周りが薄明かりに照らされ時任は自分がいた部屋がどこなのかようやく理解する
・・ここは・・さっきの体育準備室・・!
こいつ・・・!!
「お前・・太田先生かっ!?」
時任は自分を組み敷いていた男が2週間前にやってきた教育実習生の太田であることに気づくと信じられないといった風に目を開く
「なっなんで先生がっ!?」
時任の驚きは最もだろう
太田は教育実習生で短い期間ではあるが性別問わず生徒に人気のある先生だった
時任と久保田は、今日も太田の授業を受けたばかりだったのだ
「うっ・・・」
「・・・時任に目ぇ付けてたんですよねぇ?太田先生?」
黙ってたたずんでいた久保田がようやく口を開いた
「卑猥な写真を売って荒稼ぎっていう目的もでしょうケド、時任を襲うのが目的だったんじゃないですか?」
「久保ちゃん!何で?」
「く、久保田、お前帰ったんじゃっ・・!!」
「そういや授業中、そんなこと話しましたっけね。わざとですからねぇ。俺がいないことにしたほーが動きやすいと思ってね」
時任はその言葉で昼間話したことを思い出した
『時任、今日はちょっと用があるから、悪いけど先に帰っちゃうね』
先日の本部呼び出しのこともあり、時任は『・・あぁ』と不機嫌に答えただけだった
「あんたが動き出すのを待ちながら、証拠を探していたんですよ。おかげで1週間も無駄に過ごすことになったけど」

時任は話が見えず、久保田を見るが、明かりを背中から受けていたせいか、久保田の表情は見えなかった
が、しかし久保田がゆっくりと二人に近づいていくと、太田はその目をみて小さく悲鳴を上げた
「っひっ!!」
その目は普段の久保田からは考えられないような、鋭く、射抜くような目だった
太田は金縛りにあったようにガタガタと震え始めた
「いつまで時任に触れてるんですか?先生?」
バキィッッ!!
「うぐっ!!」
時任の上にいた太田は久保田の蹴りを顔面にくらい吹っ飛び、壁に叩きつけられた
自分を押さえつけてたおもりが外され時任は縛られた腕のままどうにか起き上がろうとする
「くぼちゃんっ」
名を呼ばれた久保田は時任のあられもない姿を目の端で捉えた
一糸纏わぬ上半身にはいくつか赤い痕を残され、ベルトも外されズボンも脱がされかかっていた
久保田は無表情のまま振り返り、太田をさらに何度も殴りつけた
太田は容赦ない力で蹴られ鼻は折れ、殴りつけられた顔面は血まみれになっていた
久保田が誰かを本気で殴っているのをはじめて見た時任は驚いて立ち尽くしていたが、太田が意識を失っても殴りかかろうとする久保田を見て慌てて止めに入った
「くっ久保ちゃんっ!もういいからっ!」
それでも久保田は殴りつける手を止めようとはしない
時任は執行部の天誅でもこんなに殴ってるのを見たことがない
いつも冷静で最小の力で一撃で相手を静めている久保田が
容赦なく殴りつけ息の根を止めるかのように攻めたてている
やばい・・正気じゃねぇっ!
「やめろっっって!」
真剣な時任の叫び声でようやく久保田が手を止め、振り返った
久保田は我に返ったのか、時任に歩み寄ると自分の制服を羽織らせた
「・・時任、大丈夫?」
その表情は、いつもの穏やかな笑みを浮かべる久保田だった
「くぼちゃん・・」
時任は、ほっと安堵のため息をついた
「時任、痛いとこない?もう大丈夫だから」
今度は心配そうに時任の顔をのぞきこみ、頭を優しく撫でる
時任は何も言わずただ頷き、俯いたまま頭を久保田の胸に寄りかける
久保田の制服は暖かかったが、裾は相手の返り血で染まっていた
「・・どこも痛くねぇよ・・俺は大丈夫。それよりくぼちゃん、やりすぎ・・」
久保田はほっとしたように右腕で時任の頭を抱きしめ
「・・・ん〜、つい・・ね、頭に血が昇っちゃって・・」
といつもの調子で答えた
「助けてくれてさんきゅな!とりあえず腕・・ほどいてくんね?」
いつもの笑顔で時任が礼をいうと、久保田も微笑んで縄をほどいてやった
時任の腕は縄で擦り切れ、手首は血がにじんでいた
「・・太田先生、、殺しちゃえばよかったかな?」
「なに言ってんだよくぼちゃん、すでに半殺しだろ?気ィうしなってるぜ?」
太田は死んでこそいないが、重症なのは見て分かった
久保田はそのままセッティングしてあったビデオカメラからテープを取り出しポケットに入れた
「とりあえず時任の写真とテープは処分しなきゃね」
「あぁ、くぼちゃん、それよりなんで太田のこと知ってたんだ?」
くぼちゃんがここに来たのも、太田のこと知ってたのも、
生徒会本部に呼び出されてたことに関係するようだった


くぼちゃんキレました。当然です。後篇につづく

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