そこにいる全員の視線を一身に受けながら、強気な瞳は揺らぐことなく全てを見返す。そしてニッと笑みを見せると、堂々と声をあげた。
「お前等!執行部のエースをのけ者にして、ふざけたことやってんじゃねぇぞ!!」
走ってきたのか額に汗をキラキラと光らせながら、眉を寄せた時任はそれでもイキイキとしていて。
不意をつかれて現れた相手に男等は眼をつり上げ、結子は驚きに眼を張った。
「ぜぇぜぇっ・・、あっ〜っ!久保田せんぱぁぁぁい!」
そして遅れてその場に現れた藤原の姿。
目的の人物を見つけて目を輝かせるが、久保田の目には届いていないようだった。
久保田の目に映るのは、まっすぐに自分を見つめる相方の姿だけ。
「・・・久保ちゃん。」
静かに久保田の名を呼ぶ。片眉をつりあげて、まっすぐに見つめ返す瞳に、久保田は観念したように息を吐いた。
どうやら藤原がよけいにも時任を連れてきたらしい。後々怒られるのを覚悟で、音便にすませようと考えていたが、さすが執行部のエースは、事件をかぎつける能力にも長けているのか。
なんだかなー・・。
やっぱり、お前は俺が思った通りには、いかないやつだよねぇ。
久保田はそんな思考に苦笑いを浮かべる。それでも時任を見つめる眼差しはひどく柔らかく優しい。
この場の状況を無視したような二人の空気に、芦野は目を張り絶句していた。
代わりに声を荒げたのは高本だった。
「ハッ、上等だ!計画変更だが、これで執行部は全員揃ったな!この間の落とし前はつけさせてもらうぜ!!」
そう叫ぶと、隣に集まっていた仲間たちが一斉に飛び出してきた。その数は思ったより多く、十数人の男らが時任と久保田目掛けて走りかかった。
しかしその動きは、易々と制されることになった。大人しく捕まって動けないはずの4人が同時に飛び出してきたからだ。
「――なっ!?こ、こいつらっ!いつの間に!?」
「荒磯執行部をなめるな!!」
「なめられるなんてゴメンデス!!」
相浦は桂木を背にして壁際まで走り、室田と松原が男たちに飛び込んでいく。
その一方で、時任はイキイキとして強気な笑みを見せていた。
「よう金髪ヤロウ、あんときの奴だな!」
迷うことなく自分の目の前に飛びかかってきた男に、にやりと笑うと、高本も負け時と笑みを浮かべる。
「荒磯のガキめ!こないだのお返しはたっぷりしてやるぜ!!」
「やってみやがれ!!」
時任はあっという間にその乱闘の渦の中にいた。するといつの間にか久保田が時任の背後に立ち、ぐるりと敵を見渡している。
大人数を相手にするときの、二人のいつもの立ち位置だった。
そして見事に繰り広げられる二人の動きは、まるで後ろに目が付いているんじゃないかと思われるほど、ぴったりと息が合ったものだった。
執行部員であれば見慣れすぎた風景。しかし初めて目にする者にとっては、目を疑わんばかりのコンビネーションで。次々に相手を地に伏せていく光景に、立ちつくしていた芦野が小さく声を漏らす。