[PR] この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。





 恋唄…【3】どっちと、寝る?




その夜、仕事の打ち合わせを終えた工藤はマネ―ジャ―だけを帰し、早速泊まることにした。

夕飯はマネ―ジャ―の差し入れの寿司。食欲旺盛な工藤と時任はがつがつと胃袋に流し込み、久保田の分まで平らげる。量に限りがあるとなればあとは時間競い。いつの間にか早食い競争になりつつ、二人は同時に食事を終えたのだった。

学園祭から続く二人の勝負は、ここでもまたドロ―。

さて、この二人、決着がつく日がくるのだろうか。





そうこうしているうちに夜は更けていく。


 

「―――んで?俺はどこで寝ればいい?」


 

ちゃっかり先に風呂をもらいご機嫌に工藤が尋ねると、久保田と時任が目を丸くした。


 

「ソファだろ」

「毛布なら置いてるから」


「――はぁっ!?」
 

無情なほど淡々とした二人の返事に、工藤は眉を跳ね上げ吠える。


 

「アイドルがなんでソファで寝なきゃなんね―んだよっ!フカフカのベッドじゃねぇと寝れねぇっつ―の!」

「はぁ!?仕方ねぇだろ、うちにはシングルベッド1つしかねぇんだから!イヤならベランダで寝ろ!」

「なんだと―っ!?」


 

相変わらずのワガママ野郎だと時任が突っかかれば、工藤も負けじと声を荒げる。相変わらずの似たもの同士ぶりに、割って入るのはやはり久保田だった。


 

「う―ん、でも本当に寝る場所ないからなぁ。布団も無いし・・。どうしてもベッドで寝るなら、俺らのどっちかと一緒になるけどいい?」


 

のんびりとした口調に険を削がれるも、その内容には工藤は驚くしかない。


 

「なっ!イ、イヤだ!なんで男と一緒に寝なきゃなんねぇんだ!!・・・・っつ―かお前等一緒に寝るつもりだったのかよ?」

「しょうがねぇだろ」

「まぁ、いつもならソファと交代だけど、仕方ないよね」


 

(シングルベッドに、男が二人で・・?・・・ありえねぇ・・・)


 

突然押し掛けてきた自分が根源であることは棚にあげて、工藤はぐっと眉を寄せた。

しかし、ここはやはり二人のいう通り、どちらかを選ぶしかない。


 

「んでどうする?――俺と時任、どっちと寝る?」

「う・・・」

「俺はデカイから狭いし、時任は寝相悪いから寝苦しいと思うけど?」


 

無表情に問う久保田の瞳が、怪しく光った気がしたのは気のせいだろうか。

いや、気のせいに違いない。

そう思案しつつ、しばらく二人の顔を逡巡して、工藤が出した答えは。



 

「・・・ソファでいい」



 

至極当然ともいえるだろう。


 

「了解~、じゃあおやすみ」

「じゃあな」

「・・・・おやすみ」


 

諦めたようにソファに寝ころび毛布をかぶった工藤だが。


 

(寝心地悪っ・・・)


 

堅いソファは狭く、薄い毛布では少し寒い。

しかし、大の男が二人でシングルベッドに寝るよりは幾分かマシだろう。そう考えてフンと鼻を鳴らす。


(・・・・・・・・)

工藤は不意に、
上半身を起こした。
二人で消えていった寝室のドアを見やると、ぽつりと呟く。


 

「・・あいつら、マジで一緒に寝てんのか・・」


 

複雑に歪めた顔は誰に見られることもなく―――。

工藤は再び背を向けて、今度こそ深い眠りについたのだった。





 


(^_^;)

 次へ

 戻る