恋唄…【6】遊園地は危険がいっぱい!?



マネ―ジャ―との打ち合わせを終え帰した後、3人はマンションを出た。

さすがに公共機関を使うわけにはいかないので、タクシ―で現地まで向かう。

「おおっ、すげぇ人だな!早く行こうぜ」

「はぐれんなよ、工藤」

「バーカ、ガキじゃあるめぇしっ」
「チケット、大人3枚ね」

冬休みとあってやはり人が多かった。

アトラクションに乗るのもけっこう並ばないといけないようだ。

人混みの中とはいえ、周囲にばれるわけにはいかないので、そこは工藤もいっぱしの変装をしていた。

変装とは言っても、伊達メガネに帽子を被ったくらいなのだが。

これが以外と誰にもバレずに紛れ込めていた。


「オ―ラを消すのも楽じゃないぜ」と得意げに笑う工藤に時任は「初めっからないものを消せるわけねぇだろ」と、また不毛な言い争いに発展しそうになったのを早速久保田に止められたのだった。

どちらにしても二人とも遊園地という場所にテンションがあがっている。顔を輝かせる二人はまるで子供のようで、久保田が一人保護者に見えるのだから不思議。


「あれ、久保田は?」

「タバコ買ってくるつって、どっか行った」

「ふ―ん、まぁいいや。時任、あれ乗ろうぜ!」


工藤が待てないとばかりに真上を見上げると、ゴ―ゴ―と地鳴りのような音と同時に、人の悲鳴がもの凄い早さで流れていく。

時任はごくりと喉を鳴らした。


「ジェット、コ―スタ―?」

「なんだよお前まさか絶叫系苦手?」

「ンなわけねぇだろ!俺様に弱点なんかねぇよ」

「へぇ、じゃあ行こうぜ!どっちが先にヘナるか勝負な」


実は苦手だった時任と、初めて乗って苦手だと知った工藤。この勝負も判定基準がないためドロ―。

声が枯れるほど絶叫したが、ちびりはしなかったのだからセ―フ。


「や、やるじゃねぇか」

「お、おまえこそっ。次あれ乗ろう。もっとソフトなやつ」


次に工藤が指さしたのは一人乗りのブランコのようなモノがたくさん回っているアトラクション。

絶叫系よりもだいぶマシに見えるが、あれはあれで酔いそうだと時任はげんなりする。

と、それよりも、いつまで経っても帰ってこない久保田が気になり始めていた。


「久保ちゃんおせぇな」

「そうだな。――あ、やっぱアレ乗ろっ、行こうぜ」


少し遠くに見えるアトラクションに目を輝かせて、工藤は自然と時任の手を引いていた。

しかし時任は周囲を見回して、久保田の姿を探しながら動こうとしない。


「でも久保ちゃんいねぇし・・」

「いいじゃん、遊んでれば戻ってくるだろ」


まあそうなんだろうけど、と思いつつやはり久保田が気になって仕方がなくなっていた。

まさか何かあったのだろうかと、キョロキョロと久保田の姿を探す。


「でも、はぐれちまうだろ。やっぱ、俺待ってる」

「なんだよいいじゃんかっ。久保田はおまえの保護者か?」

「人をガキみたく言うなよ」


ジロリと睨む時任に、工藤も条件反射に睨みを利かせると、一気に険悪な雰囲気となった。

工藤はなぜ自分がこんなにイライラするのか分からずにいた。


(俺のボディ―ガ―ドのくせに、久保田のことばっか気にしやがって・・)


訳の分からないイライラは余計な言葉となって吐き出される。


「ガキじゃん。あいついねぇと何もできねえんだろっ」

「は?・・てめぇ今なんて言った?」


怒りのオ―ラを纏った時任に、ぐっと工藤はのどを詰まらせる。本気で怒らせたか、そう思っても素直に引くことなど出来やしない。

なにより、ぎりりと自分を睨みつける瞳が、工藤を煽ってたまらなかった。


「・・生意気なんだよ、お前のその目っ」

「あぁ!?てめぇ、喧嘩売ってんのかよ?」


(くそっ・・、なんでこうなるんだよっ)


「――もういい。勝手に待ってろ。俺は一人で乗る」

「ああ、そうしろ!」


二人の喧嘩を止めれる人間はこの場にいない。

まさしく売り言葉に買い言葉で、工藤と時任は逆方向へ歩きだしたのだった。




時任はズカズカと足早に人混みを歩きながら、苛立ちを隠せずにいた。


「くっそ、なんだよあいつ、ムカツクっ」


(もう知らねぇよ、工藤なんか!・・あんな奴、犯人に見つかっちまえばいいんだ・・・)


「・・・・・・・」


そう心の中で思った瞬間、時任はぴたり足を止めた。


(そうだ・・――もし、ここに犯人がいたら・・)


ありえないとは思うけれど、もしもの事態がないとも言い切れない。

時任は急に不安に駆られた。


(もし、もしもそうだったら・・ヤバイ、よな・・)


久保田とも離れてしまっている今、何かあったら取り返しのつかないことになってしまう。

口の悪い工藤は腹立たしいが、自分はボディ―ガ―ドを引き受けたのだ。

今ここで工藤と離れてしまうということは、それを反故にしてしまうということ。
一度引き受けた物を簡単に投げ出すわけにはいかないし、純粋に工藤を心配している自分がいることは確かだった。


「――くっそ・・!」


時任は低く唸ると、踵を返し全速力で走り出した。



 





^^☆

 次へ

 戻る