フッと触れた思いの外やわらかな唇は、すぐに離れていって・・。目を開けると間近に優しく微笑む目と出会う。
俺はふと、夢を思い出した。
誰かに『好きだよ』と囁かれ、優しく唇がふれた感触。
あれは、多分、久保田の夢だったのかもしれない。
「ねぇ。もう他の奴に触らせないでよ」
重みを与えないように覆い被さっている久保田は、その大人な態度とは裏腹に、子供のように嫉妬を隠さずに見せていて・・。
それがとても俺の胸に心地よく響いた。
「・・久保田・・」
「俺と、つきあってくれる?」
こないだと同じ、真剣でまっすぐな瞳に胸の鼓動が騒ぐ。けれど俺はさっき橘に言われたコトがひっかかっていて・・。
「・・で、でも俺はっ・・あの夜、橘に・・」
やっと自分の想いに気づいたというのに、橘に好き勝手されたかもしれないと思うと泣きたくなるほど自分がイヤになる。だけど覚えていないし、今日みたいなクスリを使われていたとしたら・・・、はっきりと否定できない。
「あの夜?・・泥酔してた日のこと?」
「ああ・・。俺、覚えてねぇけど、あいつと・・な、なんかしたらしいんだ・・・」
「・・・・・」
俺は久保田から視線を外して言った。
久保田の沈黙が怖くてぎゅっと目を閉じていると、クスリと笑う気配がして目を開けた。
「・・?」
「それ、あいつに言われたんでしょ?大丈夫、嘘だから」
「う、嘘?」
間近でのぞき込む穏やかな瞳に、俺は目を丸くした。
「まぁ、半分はホントかな?あの夜、マンションの下まで車で送られてきたとき、時任君が起きないのをいいことに、襲いかかろうとしていた橘はホント。だけどちゃんと俺が止めたし、その後俺が、鍵を預かってるって言って、時任君を部屋まで運んだから。――未遂ってことね、・・あいつとは。」
「・・・・・・・・・」
思わず脱力した。もしかしたらほんとにあいつと関係したのかと思った。知らぬうちに久保田に助けてもらってたのか・・・。
「はぁ・・・。・・・よかった」
そうだよな。ちゃんと家に帰ってきてたし・・、第一あの朝一緒にいたのは、こいつ・・・。
――ん?まてよ。
「”あいつとは”未遂って・・?そういやお前、朝まで俺と一緒にいたよな?」
「・・あれ、気づいちゃった?」
「ちょっとまてよ。まさか、お前」
「えー、ひどいなぁ。酔いつぶれた子を無理矢理やっちゃう男に見える?」
「・・・」
ハッキリ言ってわかんねぇぞ、それは。
「それに、最後までやってたら、いくらなんでも翌朝自分で分かるでしょ? 」
「・・そ、そっか。じゃあ。ほんとになんもなかったのかよ?」
「うーん、まぁ。白状すると、キスと・・Bまでかな」
「び、Bとか言うなぁぁ!!お前ちゃっかり襲ってるじゃねぇか!」
やっぱりかっ!あのキスや触れられた感覚は夢じゃなかったんだ!
思わず納得がいった。心地よい夢だと思ったのは、たぶん、相手がこいつだったからだろう、と。
「だって、ちょっと触ると面白いぐらいよがっちゃうんだもん。時任君ったら。・・ほら、こんなふうにさ」
悪戯っぽく言いながら、タオルでなく、久保田の長い指が胸元をきゅっと摘んだ。
「あッ・・!」
女のような高い声がのどを震わす。
「好きな子の、そんな色っぽい声聞いちゃったら、たまんないでしょ。我慢して途中でやめただけ誉めてほしいなぁ」
瞬間、ボッと音がするかのように顔が真っ赤になった。
顔も体も熱くて、指で触られただけで胸の突起は痛いほど堅くなって、・・ズボンの上から見て分かるほど、半身もくっきりと形を変えていた。
久保田が小さく笑う。
「あーあ、すごいね、もうこんなんだよ」
「っ!だ、だってそれはっ・・」
クスリのせいで・・!って言い訳はできなかった。だって俺、さっきよりもずっと、興奮してる。
こいつだから。こいつに触られていると思うほどよけいに・・・。
「ね、俺のコト好き?」
「ばっ、・・そ、そんなことっ・・」
「弱ってるトコ狙って襲うような真似、したくないんだけど・・。でもこのままじゃ時任君がつらいでしょ。だから、もし俺のこと求めてくれるなら、俺はお前に触れたい」
「・・・・っ!」
ドクリと体の奥が震えた。
熱っぽい瞳、まっすぐに俺を見つめる真剣な瞳の奥に、俺を求める欲望の色が隠すことなく見えている。
こんな状態の俺を前に、なるべく触れないようにしていたのは、こいつなりに我慢してたってことなのか。
そう思ったら、無性にこいつに触れたくなった。
「・・寝込みを襲っておきながら、殊勝なコト言いやがって・・」
俺だって・・、お前に触れたい・・。
「来いよ。若いくせに、我慢してんじゃねぇよ」
「・・・うん。ありがと」
精一杯そっけなく言った言葉に、久保田はふっと嬉しそうに微笑んだ。
―――学校だからとか、生徒と教師だからとか、もし誰か来たらとか、普通だったら考えることがすべて、どうでもよくなって・・。
二人の空間を遮る壁は、頼りなげに揺れる仕切のカーテンのみだった。
静かな保健室に、濡れた音が響く。
「ふっ・・・ンンッ・・」
頭の芯がしびれるような深いキスに・・、久保田の執拗な舌に・・、俺はなにも考えられず、ただ翻弄されていた。
何度も角度を変えられながら深く貪られ、それを受け入れるのに精一杯な俺はいつの間にか全て服を脱がされ、シャツを肌蹴た久保田の引き締まった胸板がぴったりと肌に密着して、鼓動を伝えている。
これ以上ないほど堅く反り立つ自分の半身に、服越しに久保田の熱いものが密着して、ぶるりと震えた。
久保田も俺を感じてくれている。それが嬉しくて、たまらない。
「ん、はぁ・・」
ようやく離れた舌はそのまま俺の顎をたどり、首筋を滑る。胸のぷっくりとした立ち上がりをねっとりと舐めあげられ、体中に快感が走った。
「ああッ――!」
「・・・ね、キモチイイ?」
体中に舌を這わされ、時折上目がちに聞いてくる久保田の、欲情に濡れた瞳がぞくりとする。
「ああ、ココ。すごい濡れてる」
久保田はそういって、俺の半身を手に取ると、迷うことなくそのまま根本まで銜えた。
「やっああっ―――!!」
温かくてぬるりとした咥内に、ねっとりと絡みつく舌に、俺はなにも考えられなくなった。
なにせ女にだってされたことないんだ。
「・・も、ダメっっ!!」
強く吸われてあっけなく俺は久保田の口に吐き出していた。ドクリドクリと震える自分自身を、それでも吸いあげ奪い尽くす久保田に、イッたばかりの体ががくがくと震える。
「も・・、やめっ・・」
「ん・・。いっぱいでたね」
かっと顔が熱くなる。口に出したはずのものがないということは・・
「の、飲んだのかよっ・」
「うん」
信じらんねぇ・・。口端に溢れたぬるりと垂れる白い液体があまりにも淫らで、目を背けたくなる。
呆然と息をつく俺に微笑むと、今度は膝裏を抱えて俺の腰を上げた。
「なっ!?」
仰向けのまま肩に膝がつくほど高く腰を持ち上げられた格好で、久保田は俺の後ろに顔を埋めた。
「や、やぁっ!!」
ぬるっと熱い舌が後ろへ入り込んでくる。
今まで感じたことのない場所に、出入りする濡れた感触に、体を反らせるしかない。
「キレイだね、ココ。・・後ろにまで垂れてたみたいね、精液の味がする。」
「や、やめっ!言うなっ・・」
「ぬるぬるだから入っちゃいそ・・」
「んっああっ!!」
舌ではない何かが進入してきて、それが久保田の長い指だったと気づいた頃には、もう2本もそこに埋まっていて・・。
濡れた水音とともに内部を擦られて、一度萎えていた前も一気に堅さを取り戻していた。
男同士のSEXに、まったく知識がないわけじゃなくて、ある程度覚悟はしていたものの、予想以上の状況に俺の頭の中は真っ白だった。
クスリの効き目のせいなのか、久保田の執拗な攻めに体中がとろけそうな快感に襲われている。
だけど・・・――怖い・・、と思った。
初めてのことばかりで、どうしていいかわからない俺に、久保田は容赦なく感情をぶつけてくる。自分の知らない俺をどんどん、久保田は捜し当てるように俺を翻弄していく。
「・・・怖い?」
ふと、久保田が静かに言った。
俺は正直な顔をしていたんだろう。
間近に現れた瞳は、少しまぶしそうに細められているが、俺を求める光はそのままで。
それでもまっすぐに俺の返事を待つ目が、しかられた子供のようにも感じられて。なぜか、すごく愛おしく感じた。
自然にふっと笑うと、久保田は不思議そうに首をひねる。
まったく、ずるいよな、こいつは。大人と子供を使い分けてる。
―――もっと近くに来て欲しい。もっと触れあいたい。
そんな欲望がふつふつと沸き上がるのは、クスリだけのせいだとは、思えねぇよな。
久保田の首に両腕を回して、ぐっと引き寄せて、俺は思うまま言った。
「ああ、怖い。・・・・怖いくらい、お前が好きみてぇだ」
「・・・・・・・・」
・・ああ、こんなこいつの顔、はじめてみた。ちょっとまぬけな顔はすぐに、こっちが恥ずかしいくらいの甘ったるい笑みに変わっていく。
「・・・すごい、殺し文句。・・・俺の完敗・・」
そう言うやいなや、ぐっとあてられた堅いものが、ズブリと俺の中にねじこまれた。
「うっあああ――――!!」
ものすごい質量がこれ以上ないほどに俺の内部を強く捲りあげていく。
それでもなんとか耐えれるほどの痛みだけで、確実に全部のみこんでいった。
嘘だろ。信じらんねぇ、こんなっ・・・!
掠れた久保田の声が、耳元に響く。
「っ・・すご・・、ときと・・、ズプッて、全部入っちゃったよ・・」
「う、うそっ・・、ああっ!」
高くあげられていた腰に、久保田の腰が打ちつけられて、それが本当だと教えられる。
ギチギチといっぱいに埋められたものがドクドクと脈打って、それだけで俺の前は先走りを流してグンと張りつめた。
―――信じられないくらい・・キモチイイ・・。
それからゆっくりと抜き差しの動きがはじまって、俺は悲鳴にも似た喘ぎ声を止めることができない。
「ああっ、あっ、んあッ・・・!」
「声、聞こえちゃうよ・・?」
そう言うと久保田の唇に悲鳴は吸い込まれた。久保田は口を塞いだまま、激しく突き上げはじめる。
「んんっ、ふっあッ!んん――!!」
「と、きと・・、一緒にっ・・」
何度も激しく揺すられ、もう限界だった。
せっぱ詰まった久保田の声が、ズクリと腰にきて・・。
「ときとっ・・、愛してる――。」
「んん―――っ!!」
久保田の手が俺の前を握り込んだだけで、たまらずに俺は全てを吐き出した。
そして同時に久保田の熱いものが、体の奥深くに放たれたのを感じて・・、びくびくと体が震えた。
「はぁ、はっ、はぁ・・・・っ」
ようやく離れた唇の隙間から、荒く息をつく俺の顔を両手で包み、久保田はキスの雨を降らせる。
「ね、どうだった?」
「・・き、聞くなよっ・・」
「俺は死ぬほど良かったけど、時任は?」
恥ずかしげもなく言ってのける男の顔は余裕の大人の笑み。
「と、年上を呼び捨てにすんなっ・・ああっ!」
一気にこみ上げる恥ずかしさに冷静を装うが、久保田が埋まったままのモノを大きく揺らしたせいで、言葉にならない。
「く、くぼっ・、やめっ・・」
「やめてほしいなら、俺の言うこと一つ聞いてくれる?」
「なっ、てめぇ、卑きょ・・ああっ!!」
何度も動かされるうちに、中のモノが堅くなってまたイイとこに当たって、俺は慌てて言った。
「い、言うこと聞くからっ!も、今日はむりっ」
「あら、そ?」
自分で言ったくせに、あからさまに残念そうにそう言って、久保田はズルリと自分のを引き抜いた。
「じゃあ、一つだけ約束ね」
そういってとろけるような優しい微笑みを浮かべた男に、俺は性格に難ありと思いながらも、ときめかずにはいられなかった。