1.
罰ならいくらでも受けるから
どうしてこんなことになったんだろう。
その日は一日中雨が降っていて、夜になると激しく雷が鳴った。
時任は強がっていたけど、雷が苦手だったのだろう。
今日は俺がソファで寝る番だったのに、寒いだろうからと、ベッドに誘った。
もちろん誘ったって言っても、そんな色っぽいものじゃあなかったんだけど。
なのに、俺にしがみついて、小さな寝息を立て始めたお前に、俺は欲情した。
シャツからのぞく白い肌と、綺麗な鎖骨に目を奪われた。
いつもなら何とか自分の熱を封じ込めれていたのだけれど、らしくなく、それができなかった。
たぶん、イライラしてたのかな。そんな理由じゃ時任に悪いんだけどね。
今日、あの男から連絡があった。
どうやって俺の携帯番号なんて知ったんだか・・。
自業自得。それで片が付くほどあの男は簡単じゃない。
激しい雨音が、何かを呼び寄せる様に、俺の心を惑わせていた。
ただそれだけ。
それは雷の鳴る夜だった。
闇夜の空気を裂くような大きな音が地に鳴り響き、開け放たれたカーテンのせいか
暗い部屋の中でも、時任の綺麗な瞳がはっきりと見えた。
「・・久保ちゃん・・?」
組み敷いた俺の体の下で、時任は不安げに大きく目を開き、俺を見上げる。
お前が起きなければ、俺はソファに戻ろうなんて、勝手な賭けをしてたのに。
いつも起きないくせに、こういうことは敏感なのかね?
きっと、お前を見る俺の視線が、いつもと違うことに気づいたんだね。
その眼に映る俺は、本当に俺だったんだろうか?
自分でも見たことのない、欲望に濡れた瞳。
その色が、時任を怯えさせているようだった。
だけど、―――止める気はない。
俺は膝を割るように身を屈めたまま、時任の両腕をベッドに押さえつけた。
微動だにしなかった時任の体がぴくりと反応をみせた。
「久・・保ちゃん?・・なに?」
「時任・・」
熱っぽく時任の名を口にすると、それだけで胸の中で熱いものが溢れだす。
驚きで軽く開かれた唇から、赤い舌が誘うように覗いていた。
俺はたまらず、口づけ、その隙間から舌を滑りいれた。
「っ・・!!」
温かい口腔を舌先でなぞり、時任の舌を絡めとると、時任が息を呑むのが分かった。
キスをしているというのに、きっと驚きすぎて目も閉じれないんだろうね。
絶え絶えに、時任の声が漏れる。
「んっ、く、ぼっ・・・や・・っ!」
それを許さないというように、びっちりと唇の隙間を合わせ、これ以上ないほど奥まで侵入し、逃げるその舌を激しく絡め蹂躙し、強く吸い上げた。
時任は何かを言いかけるが、言葉にさせたくなかった。
やめてほしいの?
そんなのは分かってる。だけど、言わせる気はないんだよ。
奪うように繰り返される口付けに、次第に抵抗もなくなり、俺が流し込む蜜をコクリと飲みこむ音がさらに俺の欲望を駆り立てた。
長い長いキスを終えると、少し離れた二人の隙間にねっとりと糸がのびる。荒く息を繰り返す時任の表情は、壮絶な色気を放っていた。
紅潮した頬と、赤く濡れた唇。その端からは溢れだした二人の密の筋がのびている。
そして涙で潤んだ瞳がぽーっとしたように真っ直ぐに俺を見つめていた。
――もう、止まらない。
「はぁ、はっ、く、久保ちゃん、、なんでっ・・」
時任が荒い息の間から、必死に言葉を投げかけている。
「・・ごめんね。」
お願いだから、何も聞かないでくれる?
何も聞かずに、お前をちょうだい。一番大事なお前を、俺にくれるというなら、
俺は他には何も望まない。
お前が一番近くにいてくれるなら・・・、その代償は俺が身をもって償うから・・、
罰ならいくらでも受けるから――。
時任、お前を抱かせてほしい・・。
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