3.片時も頭から離れずに

 


 

『久保ちゃん』

 

お前が俺の名を呼んで、俺に笑いかける。

 

その声が、その顔が、いつでも俺のなかにあった。

 

それは片時も頭から離れずに、一番大切な場所で、ずっと存在している。

 

 

ーーー俺は白い世界にいた。

 

そこは、ぽかぽかと暖かくて、眠たくて。

 

ここにお前がいたらどんなに幸せだろうかと、

 

目を閉じていると、当たり前のようにお前が浮かぶ。

 

ねぇ、時任。

 

「あのころは・・・」なんて、昔を恋しがるなんてね。

 

俺らしくもないね。

 

だっていつだって、俺はお前といたからさ。

 

高校に入る前も、卒業した後も、出会ってからずっと。

 

ガッコは楽しかったのは確かだけど。

 

お前との思い出はたくさんあるから。

 

・・そういえば、何度か喧嘩したこともあったっけ。

 

おまえが出ていくって言った時は、俺もかなり焦ってたっけね。

 

思わず落としたタバコの火が、床を焼くのも気づかずに、おまえの体を抱きしめてた。

 

溢れてくる想いを言葉にして、お前をこの腕に閉じこめた。

 

前はかなり戸惑っていたけれど、それでも、受け止めてくれたね。

 

ああ、お前のことばかり考えてると、今、

 

お前に会いたくてたまらない。

 

ねぇ、時任。

 

ずっと一緒にいるって言ったのにね。

 

昔の約束にすがるわけじゃないけど・・。

 

−−お前は今、どこにいる?

 

会いたくて、たまらない。

 

この白い世界は、春のひだまりのように暖かいけれど、

 

お前がいないだけで、俺のカラダは、こんなにも冷たい。

 

ーーーさぁて、そろそろお前を探すために、目を覚まそうか。


 

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