修司の苦悩(前編)

 


 

12月。

1年で最も忙しいといわれる月。

師匠も走るから師走って、いったいどういう意味なんだ?

治に聞いたらバカにされそうだったから聞きたくもねぇな。

俺の名は修司。

荒磯高等学校2年で、どういうわけか執行部とやらに所属している。

現在執行部を牛耳ってんのは久保田先輩と時任先輩をはじめとする3年生なんだけど、その先輩方も来年卒業っつーことで、俺らが引き継いでいく羽目になった。

学校なんかやめよーと思ってたんだけど、治とタツがどーしてもって言うからな、しょーがなく引き受けてやったっつーわけ。

「つーか、なんで俺が倉庫整理なんてしなきゃなんねーんだ」

年末の決算書類が何だか〜で、俺ら新人3人組は部から少し離れた倉庫に書類整理と掃除に出向かされていた。

「だってよ、サボりでもしたら桂木ちゃん先輩の鉄拳が飛んでくるべ」

そう言ったのは分けられた資料をせっせと運んでいるタツだ。

「あーそりゃこえぇーな」

「そういうことだ、痛い目見たくなければ働け、修司」

そして大量の資料の中から、それぞれの資料を分別し、期ごとに順番に並べるという神経質なマネをしているのが治だ。

もくもくと手元の作業をこなす秀才の言葉に、俺は肩をすくめた。

「へーへー働きやーす」

とは言ったものの、やっぱめんどくせぇ。うちの先輩たちはほんと人使い荒すぎだっつーの。

だけど、3人で入ることになった執行部は、実は俺らにうってつけの部だったりする。なんたって正義っつー名目で、堂々とケンカできるなんざ、暴れたいざかりの俺にはありがてぇったらない。

そんなこんなでまぁ、執行部の仕事もこういう内職でなけりゃぁ、ちっとは楽しかったりするわけだ。

それはイイんだけどよ、実は最近気になっていることがある。

「あ、いたいた」

「おぅ、3人組、おつかれさん!」

資料室のドアから入ってきた2人組が、俺らを見て声をかけてきた。

「久保ちゃん先輩に時やん先輩、わ!差し入れっすか?ラッキー♪」

噂をすればなんとやらとは言うが、噂をする前に登場した2人の先輩に、俺は内心ドギマギしていた。

そう、俺が気になるのは、今にも灰が落ちそうなタバコをくわえたまま堂々と校内を歩いてきたらしい久保田先輩と、差し入れが入っている紙袋から肉まんを取り出してかぶりついてる時任先輩、この二人だ。

っつーか、持ってきといて自分で食うのかよ・・。

俺がそう言うと時任先輩は頬を膨らませた。

「4つあっから1個は俺んだよ!」

「さっき一人で3つ食べてたじゃない」

「モグモグ・・だって腹減ってしょーがねーんだ」

「時任は食べ盛りだからねぇ」

先輩だってのにすげぇ子供っぽい時任先輩と、とても高校生には見えない落ち着きすぎの久保田先輩のこのコンビは荒磯では知らない人のいない名物コンビなんだけど、どうやら噂では二人の関係はそれだけじゃないらしい。

つ、つまりだ。二人が妙に仲が良すぎて、デキてんじゃねーかっつーことらしい!

それってどーなんだぁ、男同士だぞ。

実際この二人はかなり仲がいい。いっつも一緒にいるし一緒に暮らしているとも聞いたことがある。

執行部に入ってから怪しげな二人の空気を何度か見たこともある。まぁギャグみたいなんだけど、あれがマジだとしたら笑えねぇぞ。

んでもって、今も俺らの目の前で、時任先輩の口に付いた食べかすを久保田先輩は優しく微笑みながら手で拭ってやってる。

どわーっ!わわわ、その食べかす、久保田先輩が何でもない顔してパクって食った!

こ、これは怪しいなんてモンじゃねぇぞ!きまりだろ!

んで時任先輩が顔を赤くして恥ずかしそうに睨んだりしてる!つーか、なにそのカオ。上目遣いで睨んでも怖いどころか、可愛いすぎだろっ!

〜いや、なに言ってんだオレ!先輩にそれも男相手にカワイイはねぇ!

「・・修司、お前なに百面相やってるんだ?」

治が俺を見て冷静なつっこみをいれる。

「な、なんでもねぇよ」

ふー、落ち着け俺。

二人がデキてようと、時任先輩が可愛かろうと、俺がこんなに興奮するこたぁねーんだ!

なんとか自分を落ち着けたとき、ふっと久保田先輩と目が合った。

(えっ!)

ど、どきりとした。目が合ったというより、俺を鋭い目で見てたような・・。けど俺が驚いてると、いつもの細い目に戻ってニッと笑った。

な、な、なんだ!?俺の思考を読んだのか!?

俺が時任先輩を可愛いなんて思ったから、俺を睨んでたのってのかぁ!!?

「とーきとう。そろそろ俺らも戻らないと、桂木ちゃんのハリセンくらっちゃうよ」

「そーだな、・・って久保ちゃん、重い」

「んー、だって寒いじゃない?こーしてると暖かいし」

久保田先輩は時任先輩の肩を後ろから抱きしめるように体を寄せ、時任先輩に甘えるようにカオを近づけた。

時任先輩は文句をいいつつ嫌がる風でもなく、二人はそのまま倉庫を出ていった。

み、見せつけてるとしか思えない・・。

「・・・なぁ、久保ちゃん先輩と時やん先輩って前から思ってたんだけどよ・・」

「龍之介、それ以上言うな」

ひきつった笑顔で口を開いたタツに、治の冷静な言葉が遮る。

つーか、どんなときでも冷静な治、お前がすごい。

ありゃあ・・きまりだろ!!


後篇につづく♪

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